「いもとあまぐりかぼちゃ」

 

 むかしむかし甘栗はとてもいばりんぼでした。

 なにしろ村の人が「こりゃうまい」「あまくておいしい」といつもほめてくれるのです。しかも

「おれは天下一うまい、たべものの殿様だ。」

 そう思って栗はとてもいばっていました。

 ある日栗の木の下を見なれぬ、ひょろひょろした苗がとおりかかりました。

「おい、おまえはだれだ。おれは天下一うまい甘栗様だぞ。」 

「おら、甘藷(かんしょ)といいます。」苗は答えました。


「なに、おれと似た名前のくせによわそうなやつだな、あっちへいけ。」

 甘栗に言われ甘藷はそこを去り五郎島という土地に住むことになりました。

 その年は雨がほとんど降らず、作物がぜんぜん取れずに人々は困ってしまいました。

 甘栗も実が小さくて食べれたもんじゃありませんでした。

 ところが五郎島の甘藷は青々と葉をつけて大きな実を付けたのです。

 人々はこの甘藷(さつまいも)のおかげで飢えをしのぐことができました。

 甘栗はこの様子を見て恥ずかしくて赤くなってしまいました。

「ああ、おれはなんておろかだったんだろう」

 そして自分も、人々の役に立ちたいと心から願ったのです。

 すると甘栗はみるみる大きくなり、そして立派な甘いかぼちゃになりました。

 こうしてさつまいももかぼちゃもおいしい、子どもたちの大好物となって、いまでもみんなのおなかをいっぱいにしてくれるのです。