金時草に守られた娘(つづき)

ところが鬼が庭に足を踏み入れると草が足に絡み付いてきたのです。
「なっなんだこの草は…足に絡みついてとれないじゃ〜ないかぁ」
「誰か、助けてくれ…」
娘は、鬼がとても怖かったけど草に巻きつけられたままではあまりにもかわいそうだったので、助けてあげることにしました。
「鬼さん…大丈夫ですか?…」
鬼からは返事がしません。
娘は心配になって…
もう一度大きな声で呼んでみることにしました。
「鬼さん、大丈夫ですか?」
鬼は草にぐるぐる巻きにされてしまったようです。
「うぅ…うぅ…うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」
鬼からの返事でしょうか?
「だいぶ弱っているみたいだわ」
「鬼さん、今助けてあげます」
「待っていて下さい…」
娘は、草をかきわけ鬼の声のする方へやっとたどりつきました。
でも、娘一人では鬼の足に絡みついた草をとることができません。
困った娘は、助けを呼んでくることにしました。
「鬼さん…私一人ではあなたの足に絡みついた草をとることができません…」
「今助けを呼んできます」
「待っていて下さい」
「うぅ…」
娘は、必死で鬼を助けてくれる人を探しました。
でも、鬼を助けてくれる人は見つかりませんでした。
しかたなく娘は、鬼を自分一人で助けることにしました。
草のギザギザが娘の白い手を傷つけましたがかまわず一枚一枚からみついた草をはずしていきました。
するとどうでしょう。鬼をからみとったはずの草の中から一人の若者が現れたのです。
「娘さんありがとう。あなたのおかげでもとの人間に戻れました」
ふしぎな草の力が鬼の力を吸い取ったのです。
それから、この鬼の力をすった草の裏側は紫色になり、この草を食べたひとたちはとても元気が出るようになりました。
人々は水前寺菜を、むかし鬼を退治した坂田の金時にちなんで金時草 きんじそうと名付けました。
そしてあの2人はどうしたかというと…みなさんのご想像の通りです。おしまい。